睡眠薬の副作用でもっとも注意したいのは、長期服用と大量服用によって形成される「耐性」と「依存性」です。
耐性とはお薬に身体が慣れてしまって同じ服用量ではだんだん効き目がわるくなることです。
依存性とはやはりお薬に身体が慣れることで、服用を中止すると心身に変調が現れることです。
現在主流になっている「ベンゾジアゼピン系(デパスなど)」や「非ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬にも耐性と依存性が出る可能性があります。 続きを読む
睡眠薬の副作用でもっとも注意したいのは、長期服用と大量服用によって形成される「耐性」と「依存性」です。
耐性とはお薬に身体が慣れてしまって同じ服用量ではだんだん効き目がわるくなることです。
依存性とはやはりお薬に身体が慣れることで、服用を中止すると心身に変調が現れることです。
現在主流になっている「ベンゾジアゼピン系(デパスなど)」や「非ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬にも耐性と依存性が出る可能性があります。 続きを読む
現在日本で処方されている睡眠薬は次の5種類です。
この中で催眠効果がもっとも強いのは1の「バルビツール酸系」ですが、睡眠中の呼吸が浅くなるなどの副作用が強いので現在では特別な場合をのぞいては処方されることがありません。
飲み続けると薬が効きにくくなる耐性や依存性ができやすいリスクも大きいお薬です。
反対に催眠効果がもっとも弱いのが4の「メラトニン受容体作動薬」です。
欧米や東南アジアでは薬局でもメラトニンを手軽に購入でき、快眠や時差ぼけの解消などに一般的に使われます。
メラトニンは人の自然な睡眠リズムを作る脳内ホルモンで、メラトニン受容体作動薬はそのはたらきを強化する作用がありますが、加齢やストレス、生活習慣などで量が減って睡眠の質や量が低下するのです。
うつ病にはかぎりませんが、病気になると医療費がかかるし、仕事を休んだ場合は収入が減ります。
もし死亡した場合は、元気で定年まで働いていたら得ることができた収入を損したと考えることもできます。
これは患者さん本人の損失であると共に、社会全体の損失でもあります。
厚生労働省のホームページ「みんなのメンタルヘルス」によると、日本のうつ病患者の数は、1996年の43万人から2008年の104万人に、12年間で2倍以上に増えています。
厚生労働省の補助金で行なわれた「精神疾患の社会的コストの推計」によると、2008年のうつ病によって生じた社会的損失は約3兆1000億円と試算されています。
その内訳は、
直接費用:約2000億円
間接費用として
・罹病費用:約2 兆1000億円
・死亡費用:約8000億円
となっています。
直接費用とは病院での診察代や薬代などの治療費です。全体の額からすると意外に少ないと感じる人がいるかもしれません。
うつ病はなったことがない人には想像できないつらい病気です。
気分が落ち込んで、何をする意欲もわかないというのもつらいのですが、何よりつらいのは自分には生きていく値打ちがないという気持ちになることです。
しかし、そんなつらい病気でもそれを克服したときに、それまでの自分には見えていなかったものが見えるようになった話す患者さんは少なくありません。
うつ病を経験して見えるようになるもの、分ることというのはどんなことなのでしょうか。
多くのうつ病の「元患者さん」が言うのは、人に優しくなれたということです。
「徒然草」に、病気ひとつしない健康な人は友達に持ちたくないと書かれています。病気の人に対する同情が少なく、思いやりにかけるからです。
心の病気でも、あまりに「健康」な人はときに残酷なことを言います。
うつ病で心のエネルギーが低下しているときにそんな言葉を聞くと深く傷ついてしまいます。
うつ病になったときにもっとも気をつけたいことは、病院に行かずに治そうとすることと、抗うつ剤など薬を飲まずに治そうとすることです。
うつ病は治療に人の助けが必要な病気で、その人とはまずは医師です。医師との信頼関係がないと、うつ病の治療はなかなかうまくいきません。
また、患者さんの中には抗うつ剤を飲むことに抵抗がある人も少なくありませんが、医師が抗うつ剤での治療を始めましょうと言ったときは、素直にそれに従うべきです。
軽症のうつ病の場合は、充分に休養を取ったうえで、カウンセリングや認知行動療法などの心理療法だけで治療することもできます。
しかし、実はその方が時間的にも経済的にも患者さんの負担は大きくなり、実際には無理な場合もあります。
うつ病の患者さんは脳内の神経伝達物質のセロトニンの濃度が低下していることが分っています。
抗うつ剤はそのセロトニンの濃度を上げるお薬で、それによって抑うつ症状が改善することも分っています。
抗うつ剤によってうつ病が根本的に治るわけではありませんが、気分の落ち込みや自己否定感情などのつらい症状をお薬で軽くすることは非常に重要です。
うつ病の治療の最初の目標は重症化を防ぐことだからです。
定年退職した夫に妻が手渡したものは離婚届の書類だった、というのは「熟年離婚」をテーマにしたドラマの1シーンですが、この熟年離婚の原因の1つになっている「昼食うつ病」という病気をご存知でしょうか?
これは、夫の定年を機に妻に発症するうつ病です。夫が定年になって昼も家にいるようになると、妻は朝と晩だけでなく昼食も用意しなければいけません。
その負担がきっかけで発症するのが「昼食うつ病」です。
そう聞くと、昼食を作るくらいの負担でうつ病になるかな? 「昼食うつ病」というのは象徴的な表現で、1日中夫が家にいるようになったのがうっとおしいのではないか、と思う人が多いようです。
また、そもそも夫が嫌いだからじゃないか、と思う人もいます。
しかし、これはどちらも間違いです。とくに、夫が嫌いだから(夫からすると俺のことが嫌いだから)という誤解は、昼食うつ病がきっかけで本当に熟年離婚してしまうという悲劇を生むことがあります。
何十年も夫と子供の朝食と夕食を作り続けてきた主婦にとって、昼食は唯一の手抜きが許される食事です。
精神疾患には症状として妄想をともなうものが少なくありませんが、うつ病の症状は気分の落ち込みや意欲の低下がおもで、妄想が起きることは多くはありません。
しかし、ときにはうつ病に特有の妄想が起きることがあります。それは誇大妄想の逆の「微小妄想」といわれるもので、微小妄想には①心気妄想、②罪業妄想、③貧困妄想の3つがあります。
心気妄想は、自分はがんなどの重い病気にかかっていると思い込む妄想です。お腹が痛いと胃がんではないか、頭が痛いと脳梗塞の前兆ではないかなど、ちょっとした体の不調を重大な病気に結びつけて考えて不安を募らせます。
病院の検査結果などを元に医師や家族が何ともないと説明しても、「本当のことを言って絶望させないように皆で嘘を言っているのだ」と考えるので、説得は効果がありません。
罪業妄想は、過去のささいなミスなどで過剰に自分を責め、会社の業績が上がらないのはすべて自分のせいだとか、そのために自分は罰せられるとか思い込む妄想です。
患者さんの口からは「申し訳ない」という言葉がひんぱんに出で、「その罪を償わなくてはいけないから家族とはもう一緒に暮らせない」などと言うこともあります。
貧困妄想は、実際には預貯金などがあるのに、貧乏だと思い込んで将来を悲観する妄想です。
冬季うつ病は秋から冬に発症して春には治ってしまううつ病です。
うつ病の1つのタイプなので、抑うつ症状など多くの症状が共通していますが、ふつうのうつ病とは異なっている点も多くあります。
そのため、うつ病とは認識されないままに重症化するケースもあります。
まず共通の症状を確認しておくと、①気分の落ちこみ、②楽しいとか嬉しいという感情の低下、③食欲の低下あるいは増加、④不眠または過眠、⑤罪悪感、⑥自殺念慮、⑦集中力、思考力の低下、⑧焦燥感、⑨疲労感、意欲の低下、などです。
このうち、冬季うつ病では食欲の低下よりは増加が、不眠よりは過眠の傾向が多く出るのが特徴です。
うつ病や冬季うつ病の患者にこれらの症状がすべてあるわけではありませんが、このうち5つ以上の症状が2週間以上続くことがうつ病と診断する基準になっています。
タバコを吸うと気分がスッキリするのは、ニコチンが脳の神経伝達物質であるドパミンやセロトニンの分泌を活性化するからです。
うつ病はセロトニンの不足によって起きるので、一見すると喫煙によってうつ病の発症を防ぐことができそうに思えます。
しかし、さまざまな研究によると、結果はむしろその逆です。禁煙補助薬のチャンピックスを発売しているファイザー社のホームページには、喫煙者は非喫煙者の2.9倍のうつ病発症リスクがあるとする海外の調査が紹介されています。
また、東京近郊に住む労働者約2,800人への調査では、1.65倍喫煙者のうつ病発症率が高かったという結果も紹介されています。
その理由としては、たしかにニコチンには気分を安定させるセロトニンの分泌を瞬間的に高める作用がありますが、常用しているとニコチンの力を借りなくては脳内のドパミンやセロトニン濃度の調節ができなくなることが考えられます。
これがニコチン依存症で、ニコチンへの依存は脳内物質のバランスを不安定にしてうつ病のリスクを高めるのです。