社会不安障害と治療薬社会不安障害は、人前で失敗して恥をかくことを強く恐れて、人前で何かをすることに強い緊張と不安を感じる病気です。

10代で発症することの多い病気ですが、治療が遅れると重症化して、うつ病などを併発するケースが少なくありません。

治療は精神科または心療内科で薬物療法や精神療法を行ないますが(両方を並行して行うこともあります)、ここでは薬物療法についてお話します。

社会不安障害の治療に使われるお薬の第一選択はSSRI(選択的セロトニン再取込阻害薬)です。

これは抗うつ剤として有名なお薬で、20世紀末に登場した副作用が少ない新しいタイプの抗うつ剤です。

SSRIは脳の神経伝達物質の1つのセロトニン受容体に作用して、脳内のセロトニン濃度を高める働きがあります。

それによってうつ病では気分の落ちこみが改善し、社会不安障害では不安な気持ちが軽減します。

脳内の神経伝達物質にはセロトニンの他に、ドパミン、ノルアドレナリンなどがありますが、セロトニンは怒りや不安、悲しみなどの感情をやわらげて気分を安定させる働きをしています。

続きを読む

抗うつ剤うつ病で精神科や診療内を受診する患者さんの中には、「なるべく抗うつ剤などお薬を使わずに治したい」と希望される人がいます。

うつ病かなと思ってもなかなか病院を受診するふんぎりがつかない人が多い中で、きちんと治療する決断をされたことは賢明な選択ですが、「お薬を使わずに治したい」ということにこだわると治療の効果が上がらない場合があります。

その説明の前に、もし診察の時に医師があなたに「抗うつ剤を飲んでみますか?」と聞いてきたらどう思うかを考えてみてください。

そんなこと聞かれても困るし、何とも頼りないお医者さんだと思うはずです。

うつ病の治療には患者さんの協力が必要なので治療方針について医師から相談されることはありますが、薬を飲むかどうか、どんな薬を飲むかは医師が決めることです。

医師が患者さんと相談するのは、例えば「お薬だけよりもカウンセリングを受けた方が良いと思いますが、その時間は取れますか?」というようなことです。

カウンセリングや認知療法などの心理療法が効果的だと思っても、薬物療法よりは時間も費用もかかるので医師の一存では決められないからです。

続きを読む

抗うつ剤抗うつ剤は脳内のセロトニンやノルアドレナリンの濃度を上げるお薬です。

これはたとえると、バッテリーを充電して電圧を上げていくことに似ています。それにはある程度の時間がかかり、OFFになった電灯のスイッチをONにするようなわけにはいきません。

SSRIやSNRIなどの最近の抗うつ剤は効き目が出だすのが以前の抗うつ剤よりも早くなりましたが、それでも1~2週間はかかります。

さらに、薬本来のしっかりした効果が出るまでには1~2ヵ月かかります。

しかし、問題は抗うつ剤には症状や個人との相性があって、医師も最初からどの薬が良いかは分からないことがあり、飲みはじめても効果がない場合は薬の種類を変える必要があるということです。

うつ病はたいへん辛い病気なので、2週間も薬を飲んで効かないから別の薬にしようというのはまさに泣き面にハチですが、そんなとき患者さんが絶対してはならないことは自己判断で薬の量を増やすことです。

抗うつ剤は例えばふつうは1日10mgを服用する薬なら最初は2.5mgとか5mgから服用をはじめで数週間かけてしだいに用量を増やしていきます。

これはどれくらいで効果が出るかを見極めるためでもありますが、副作用を少なくするという目的もあります。

抗うつ剤は効果が出る前に副作用が先に出るという性質があります。

続きを読む