抗うつ剤は脳内のセロトニンやノルアドレナリンの濃度を上げるお薬です。
これはたとえると、バッテリーを充電して電圧を上げていくことに似ています。それにはある程度の時間がかかり、OFFになった電灯のスイッチをONにするようなわけにはいきません。
SSRIやSNRIなどの最近の抗うつ剤は効き目が出だすのが以前の抗うつ剤よりも早くなりましたが、それでも1~2週間はかかります。
さらに、薬本来のしっかりした効果が出るまでには1~2ヵ月かかります。
しかし、問題は抗うつ剤には症状や個人との相性があって、医師も最初からどの薬が良いかは分からないことがあり、飲みはじめても効果がない場合は薬の種類を変える必要があるということです。
うつ病はたいへん辛い病気なので、2週間も薬を飲んで効かないから別の薬にしようというのはまさに泣き面にハチですが、そんなとき患者さんが絶対してはならないことは自己判断で薬の量を増やすことです。
抗うつ剤は例えばふつうは1日10mgを服用する薬なら最初は2.5mgとか5mgから服用をはじめで数週間かけてしだいに用量を増やしていきます。
これはどれくらいで効果が出るかを見極めるためでもありますが、副作用を少なくするという目的もあります。
抗うつ剤は効果が出る前に副作用が先に出るという性質があります。
SSRIやSNRIはそれ以前の抗うつ剤より副作用が少ないのが特徴ですが、それでも効果より先に副作用が出る点は同じです。
抗うつ剤によくある副作用は口の渇き、便秘、吐き気などで、薬の飲みはじめに出て、飲み慣れるにしたがってなくなるのが普通です。
したがって抗うつ剤の飲みはじめは、効果が現れないのに服用が出るという辛い経験を強いられるわけですが、急いで薬を増やすことだけでなく自己判断で薬を止めてしまうのも絶対にNGです。
効果より副作用が先に出ることを了解したうえで、辛抱づよく付き合う必要があるのが抗うつ剤です。
しかし、効かない薬をまんぜんと服用し続けるのも治癒を遅らせることになります。
医師は1~2週間たっても効き目が現れない場合は、早めに薬の変更を決断することが増えています。
というのは、最近の研究では早期の段階での効き目がその後の効き目を反映することが多いという報告が多いからです。
逆に注意しなければいけないのは、薬を服用して2~3日くらいで急に元気が出たような場合です。
これは薬の効果ではなく副作用の1種で、精神が不安定になり躁状態になっている可能性があります。
抗うつ剤の効果は三歩進んで二歩下がるように、行きつ戻りつしながら現れてくるものです。
その日その日の気分の上下をあまりに気にせずに、長い目で治療を継続することが重要です。
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