うつ病は心の風邪じゃない「うつ病はこころの風邪」という言葉は、2000年前後に初めてSSRI(選択的セロトニン再取込阻害薬)が販売されたころに、製薬会社が使いはじめたキャッチフレーズです。

この言葉を初めて使用したのは、世界初のSSRIであるデプロメールを発売したMeiji Seikaファルマ社でしたが、世界にこの言葉広めたのは2番目のSSRIのパキシルを発売したグラクソ・スミスクライン社だと言われています。

SSRIは従来の三環系抗うつ剤などに比べて副作用が少なく安全性の高い薬として、比較的軽症のうつ病にも処方されるようになりました。

一時期米国などでは、ストレスの多い仕事をしているビジネスマンの間で抗うつ剤を服用するのがブームのような様相を呈したこともありました。

そのブーム(?)に一役買ったのが「うつ病はこころの風邪」というキャッチフレーズです。日本でもこの時期に抗うつ剤の処方が飛躍的に伸びました。

うつ病は「こころの風邪」という表現は、うつ病が特別な人がかかる病気ではなく、誰でもかかる可能性があるふつうの病気だと、いうことを世間に知らせるうえで大きな功績がありました。

しかし、風邪にたとえることによってうつ病に対して大きな誤解を与えるという罪も犯すことになりました。

その誤解とは、軽いうつ病は治療をしなくても自然に治るという考えです。

しかしうつ病は風邪のように数日たつと免疫機能が抗体を作ってウィルスの増殖を抑えてくれる病気ではありません。

うつ病は脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの分泌が不足する、原因がよく分っていない病気です。

脳内のセロトニンの濃度が下がって神経間の情報伝達がうまくいかないうつ病という病気は、いわばバッテリーの電圧が下がっている状態です。

その状態を改善するには充電が必要で、放置するとますます電圧は下がってしまいます。つまりうつ病を治すには、薬物治療を中心とする治療がぜひ必要なのです。

「こころの風邪」という言葉には、それほど重大な結果にはならないというニュアンスも感じられますが、これもうつ病の実態とはおおきくかけ離れています。

うつ病は患者さんの自己認識をゆがめて「自分は生きている値打ちがない」とか「自殺しなければならない」と思わせる病気です。

このような思いは「もう生きていたくない」とか「死んでしまいたい」という気持ちよりも強い自殺衝動を生みます。

日本では年間およそ3万人の人が自殺していますが、その中のかなりの人がうつ病を発症していたと考えられています。

うつ病は誰でもかかる可能性がある病気だという点は風邪と似ていますが、①治療が必要な病気であること、②放置すると重症化しやすいこと、③治るまでには時間がかかり、長期間の治療が必要であること、などが風邪とはおおきく異なります。

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