ネット上には「パキシルを飲んで太った」という体験談がいろいろアップされています。
そういう記事を読むと女性なら「パキシルは使いたくない」と思ってしまうのも無理ありません。
しかし、パキシルは気分の落ち込みや不安を解消する効果では定評のあるお薬なので、「太る」という評判だけで選択肢から除外してしまうのは良くありません。
まず、体重増加の副作用について、パキシルと他の抗うつ剤を比べてみましょう。
パキシルはSSRIという新しいタイプの抗うつ剤の1つで、それまでの三環系抗うつ剤、四環系抗うつ剤に比べると副作用が少ないお薬です。
体重が増える副作用もパキシルはそれ以前の抗うつ剤より少なくなっています。
しかし、SSRIの中ではパキシルは体重の増加がいちばん多いと言われています。
現在の抗うつ剤の主流はSSRIなので、「パキシルは太る」という評判は間違いではありません。
また、SSRIの後に登場したSNRIという抗うつ剤は、ノルアドレナリンに作用して代謝を高める効果があるので、SSRIより体重増加の副作用は少なくなっています。
パキシルに体重増加の副作用があるのは、セロトニンという脳内物質を増やして気分をリラックスさせるという効果の半面、その作用が新陳代謝を抑制して太りやすい身体にするからです。
また、薬がヒスタミン受容体にも一部作用してしまい、そのせいで食欲が増加するのも原因の1つです。
これはSSRIに共通の副作用ですが、パキシルは比較的それが強いと考えられます。
しかし、実はパキシルの製薬メーカーが出している添付文書の「主な副作用」には体重増加の副作用は記載されていません。
「その他の副作用」としていろいろあげられている中に「体重増加」とあるだけです。
これは、体重増加の副作用があらわれる頻度が低いということと、抗うつ剤の副作用のやっかいな点である「薬の効果が出る前に副作用が先に出る」ということがないからだと考えられます。
したがって、パキシルは抗うつ作用に優れたお薬であるだけに、敬遠せずにまず使ってみる価値のあるお薬だということができます。
体重増加の副作用があらわれたとしても、半年、1年と服薬を続けるうちに徐々に出てくる副作用で、その前にしっかりした抗うつ効果が現れているはずだからです。
その上で、もし体重の増加がどうしても気になるようなら、うつ病や不安障害の症状が改善している場合は少しずつ減薬を開始する、またはSNRIなど体重増加が少ないお薬に変えるという方法があります。
しかし、パキシルを服用していて体重が増加したとしても、それがかならず薬の副作用とは限らないということも承知しておく必要があります。
うつ病は健康なときに比べて運動量が激減する病気なので、薬の副作用がなくても太ることがあります。
また、うつ病や不安障害では過食の症状がでることがあり、その場合も当然体重は増加します。
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