仕事に都合の良い病気というものはありませんが、初対面の人と話したり電話をすることに強い緊張を感じ、そんな場面に参加することに恐怖や不安を抱く社会不安障害は、とくに仕事を続ける上ではやっかいな病気です。
もしかして社交性障害かなと思いながら病院で診断を受けず、治療をしないまま、なんとか仕事を続けているという人は、症状が改善しつつあるという自覚がないかぎり、早めに精神科または心療内科を受診すべきです。
いわゆる「場数を踏む」ことでは改善せず、むしろ失敗の経験が予期不安を増幅して、さらに強い緊張や恐怖を感じるようになるのがこの病気の特徴です。
また、治療をしている人は医師の指示に従うことが基本ですが、この病気に対する自分自身の知識、理解深めることも重要です。
俗に「べつに命を取られるわけじゃなし」と言いますが、社会不安障害はまさにそんなささいなことに強い緊張や恐怖・不安を感じてしまう病気です。
この一見理不尽な恐怖や不安が、「他人から低く評価されることを恐れる気持」から来ていることを自分で了解しておくことは大切です。
理由の分らない恐怖はさらに恐怖を大きくしてしまうからです。
またこの知識があれば、仕事の役割の選択が許される場合は、当面はそのような評価に直接さらされない仕事を担当することも可能になります。
また、ある意味でもっとも難しいがもっとも効果があるのが、上司に病気で治療中であることを打ち明けて、協力と支援を求めることです。
これは病気が重くなって休職しなければならないときにはぜひ必要な手続きですが、できればその前にやっておきたいことです。
会社に産業医がいるなら、まずそこに相談して上司に伝わるように希望するという方法もあります。
精神疾患の場合は、できるだけ会社の上司や同僚には病気のことを知られたくないと思うのが普通ですが、周囲がそれを知らないことが本人の利益になるとは限りません。
病気で社交能力が低下しているのなら病気が治れば能力も向上すると周囲は理解します。それが健康時の能力だと思われるのは、けっして本人の利益になりません。
足をけがしている部下に外回りの仕事をさせる上司がいないように、社会不安障害を治療中の部下には、できるだけ人と直接接しない仕事を回してくれるはずです。
限られたメンバーでチームの総合力を上げるにはその方が良いし、患者さんもその間に回復をはかることができます。
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