ロゼレムはメラトニン受容体作動薬と呼ばれる新しいタイプの睡眠薬で、これまでの睡眠薬とはまったく違う仕組みで眠りをもたらします。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬では、「最高血中濃度到達時間」と「半減期」が薬の特徴を知る目安になりますが、ロゼレムの場合はそれだけでは薬の性質を推測しきれません。
睡眠薬が服用してからどれくらいの時間で効きだすか、効果がどれくらい持続するかは、血液中の薬の成分の濃度が目安になります。
成分の血中濃度が最高値に達する時間が短ければ即効性のある薬で、その濃度が1/2になる時間(半減期)が長いほど長時間効果が持続する薬です。
現在もっともよく処方されているベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、半減期によって、超短時間型(2~4時間)、短時間型(6~8時間)、中時間型(12~24時間)、長時間型(24時間超)の4タイプに分類されています。
ロゼレムの最高血中濃度到達時間は0.75時間で、半減期は0.94時間なので、この分類でいうと超短時間型に属することになりますが、ロゼレムにはベンゾジアゼピン系の超短時間型の睡眠薬であるハルシオンのような即効性も、キレの良い催眠効果もありません。
その理由は、どのような仕組みで眠りをもたらすかという作用機序がこの2つではまったく違うからです。ハルシオンなどのベンゾジアゼピン系の薬は、脳の機能を抑制して、いわば「起きていられなくする」作用があります。
一方ロゼレムは、ヒトの自然な睡眠リズムを作っているメラトニンという脳内ホルモンに作用して、自然に近い形で眠りをもたらします。
したがってロゼレムには、意識のスイッチを切るようにストンと眠りに落ちるような効果はなく、夜になると活発に分泌されるメラトニンの作用を強化して自然の眠りを助けるように効果を発揮します。
ロゼレムの半減期は0.94時間と短いのですが、ロゼレムの代謝物にも催眠作用があり、それを含めると服用後3時間くらい効果が持続します。
ただし飲んで3時間すると目が覚めるというわけではなく、その後は体内で分泌されるメラトニンの作用で自然な眠りを継続することが期待できます。
ロゼレムの本来の効果は催眠作用の強さや効果の持続時間ではなく、ある程度の期間服用して、自然な睡眠リズムを取り戻すことにあります。
海外旅行で時差ぼけになったり、交代勤務の影響で夜眠ることができなくなった場合なども、体内時計を正常に戻すのに役に立ちます。
また、ロゼレムは他の睡眠薬のように睡眠の質を落とすことがないので、熟睡障害の治療にはとくに適しています。
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