精神科で処方する睡眠薬や抗不安薬は、おもにベンゾジアゼピン系と呼ばれる中枢神経に作用するお薬です。
ベンゾジアゼピン系の薬物には①催眠作用②抗不安作用③筋肉弛緩作用④抗けいれん作用の4つの作用があり、精神科の他に内科や整形外科でも広く処方されています。
不眠や不安の症状に悩んで精神科を受診する患者さんの中には「なるべく薬は飲みたくない」という人が少なからずいます。
それは、睡眠薬や抗不安薬には依存性があっていちど飲み始めると止められなくなる、というイメージがあるからです。
しかし、睡眠薬や抗不安薬が怖いというイメージは、実はベンゾジアゼピン系のお薬が登場する前のバルビツール酸系のお薬の時代にできたものです。
バルビツール酸系のお薬は、不眠や不安を改善する作用は強いのですが、依存性も形成されやすいというリスクがあり、現在はほとんど使用されていません。
現在主流になっているベンゾジアゼピン系のお薬にも依存性はありますが、①服用量を安易に増やさない、②漫然と長期間飲み続けない、という注意を守れば、依存症に苦しむことはめったにありません。
では、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬の依存性の強さはどれくらいなのでしょうか?
薬物の依存性の研究で有名な精神薬理学の柳田知司博士が行った実験では、依存性の強いものから、以下のという結果が出ています。
- コカイン【最強】
- モルヒネ
- ペンタゾシン(がんなどの強い痛みに対する鎮痛剤)
- アンフェタミン(覚せい剤の1種)
- アルコール
- ジアゼパム(ベンゾジアゼピン系の抗不安薬)
- ニコチン
- カフェイン【最弱】
実はこれはアカゲザルという日本猿に似たサルを使っての実験で、そのままヒトに当てはめることはできませんが、一応の目安にはなります。
注目すべき点は、ベンゾジアゼピン系のお薬の依存性はアルコールよりも弱いという結果が出ていることです。
アルコール依存症は一度かかると治りにくい怖い病気で、アルコールの依存性を軽視することはできませんが、節度のある飲み方をしていれば過剰に心配する必要がない嗜好品です。
20歳未満はその点が少し心配なので禁止されていますが、大人は自己診断で購入できます。
したがって、医師の処方で服用するお薬である睡眠薬や抗不安薬の使用を過剰に心配する必要はありません。
不眠や不安を放置するとうつ病などの他の精神疾患を併発するリスクが高くなります。
正しく使用すれば、服用するリスクよりベネフィット(利益)が大きいと言えます。
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