拒食症は、①体重を増やすことに対する強い恐怖があり、②健康を害するほどやせているのに、③極端に食事を制限し続ける病気です。
同時に、④やせているのにまだ太っているという身体像(ボディイメージ)のゆがみがあり、⑤やせすぎていることの危険性に対する認識の欠如がともなっています。
このような要件が揃えば拒食症と診断されますが、見た目にも分りやすい体重の基準は、BMIが17.5以下となっています。これは身長150cmでは体重が39.3kg以下の人が該当します。 続きを読む
拒食症は、①体重を増やすことに対する強い恐怖があり、②健康を害するほどやせているのに、③極端に食事を制限し続ける病気です。
同時に、④やせているのにまだ太っているという身体像(ボディイメージ)のゆがみがあり、⑤やせすぎていることの危険性に対する認識の欠如がともなっています。
このような要件が揃えば拒食症と診断されますが、見た目にも分りやすい体重の基準は、BMIが17.5以下となっています。これは身長150cmでは体重が39.3kg以下の人が該当します。 続きを読む
拒食症(神経性無食欲症)の患者さんにいちばん持ってほしい考え方は、「私は太っている」という認識や「太るのが怖い」という気持ちそのものが病気の症状だということです。
そう言われてもすぐには納得できないでしょうが、拒食症の治療では患者さん本人が病識(自分は病気だという自覚)をもち、ご家族や医師と協力して病気を克服しようという気持ちがぜひ必要です。
女性なら誰でも他人に太っていると言われると気にするし、そう言われた経験は心の傷になります。
しかし、二度とそんなことを言われないように絶対に太らないようにしようという気持ちがあまりに強いと、客観的な事実とは関係なしに「私は太っている」「もっとやせなければならない」という強迫観念が形成されてしまうことがあります。
それは、強迫性障害の人がドアの鍵をかけたことを何度確認しても、つまり施錠したことは客観的には明白でも、気になってまた確認しに戻らなければ気がすまない、というのと似ています。
拒食症のもっとも特徴的な症状は、食事量の極端な低下です。
これはダイエットと見かけは同じですが、拒食症の場合は明かに健康に害をおよぼすくらいに食事の量が減り、しかも本人はそれが健康を損ないつつあることを認めません。
このような症状の根本にあるのは、食べるべきではないという気持ち、食べることに対する一種の罪悪感です。
こういう気持ちが生じる原因は太ることに対する過剰な恐怖感ですが、それだけではなく、客観的に見るとむしろやせているのに自分は太っていると思い込む認識のゆがみ、やせてきれいにならないと他人に認めてもらえないという自尊感情の低さが関係していると考えられます。
拒食症の患者さんは食べる量が少ないというだけでなく、食卓に着いてもなかなか食べ始めようとせず、食べるときは異常に食物を細かく刻む傾向があります。
また、肥満恐怖から1日に何度も体重を計り、少しでも増えていると、食べた後に喉に指を入れて吐く、下剤を服用するなどの行動をとります。
あまり食べないのに運動量を増やすという場合もあります。
拒食症は過剰なダイエットがきっかけで発症することが多い病気で、患者の多くは10代の女性です。
正式には「神経性無食欲症」あるいは「神経性食欲不振症」といい、過食症を含む摂食障害の1つです。
アメリカの人気音楽グループ、カーペンターズの女性ボーカルのカレン・カーペンターが拒食症のため1983年に32歳で死亡したことで、この病気が広く世間に知られるようになりました。
拒食症はいったん発症するとなかなか治りにくい病気で、非常に死亡率が高い(6~7%)ことでも知られています。
拒食症のスタートラインは「自分は太っている」という認識と「やせてきれいになりたい」という願望で、どちらも女性なら誰しも経験がある心理状態です。
しかし、ここから極端なダイエットにはまると、栄養失調が心身におよぼす影響も加わって、しだいにこの心理状態に異常性が生じる場合があります。
つまり、客観的には太っていないしむしろやせているのに、まだ太っていると思い込む「認識のゆがみ」が生じ、やせてきれいにならないと人に受け入れられないと強く思い込んでしまうことがあるのです。