軽症のうつ病を軽く考えてはいけない理由は、軽く考えて放置すると重症化するおそれがあるということ以外に、軽症のうつ病だからこそ気をつけなければいけないリスクがあるからです。

それは、うつ病の特徴的な症状の1つである「自殺念慮」を実行してしまうことです。

うつ病は重症のときは自殺する心配はないが、回復期に入って少し元気になるとそのおそれがある、という話を聞いたことがあると思います。

軽症のうつ病は自殺する元気があるのがやっかいなところなのです。

自殺念慮は自殺したい思いというよりは、自殺しなければならないという思いです。

これはうつ病に特有のゆがんだ自己認識のせいで、自分には生きている価値がないとい思い込むことからきます。

よく誤解されているので気をつけたいのは、この自殺念慮は重症のうつ病にだけあるのではなく、軽症のうつ病にもあることです。

一時的な気分の落ちこみは誰にでもありますが、そう何日も続かないし本気で自殺を考えることはありません。

しかしうつ病の場合は、なんとか会社や学校に行くことができる軽症のケースでも、2週間以上気分の落ちこみや意欲の低下が続き、本気で自殺を考えることがあります。

うつ病と診断される基準としては、①気分の落ちこみ、②疲労感と意欲の低下、③自殺念慮の他に、④ものごとに興味が持てず喜びを感じない、⑤食欲の減少または増加、⑥不眠または過眠、⑦強い焦燥感、⑧自責感情、⑨思考力、集中力の低下、があります。軽症でもうつ病の場合はこのうちの少なくとも5つが当てはまります。

うつ病かなと思ったら、気力で治そうとか、根性で乗り切ろうなどと無理を重ねずに、まず重要なことは「休養」です。

ガス欠になりそうなときはいったん止まって給油することが必要です。バッテリーが切れそうなときは充電しなければなりません。

消化していない年休があれば、まとめて休みを取るようにしましょう。無理をして旅行などせずに家でゴロゴロしているだけで充分です。

休養だけでは改善しないときは、まだ何とか仕事が続けられているうちに専門医の診察を受けるべきです。

軽症にはそれにあったお薬もあるし、すぐに抗うつ剤による治療を始めなくても、医師と治療法やうつ病を悪化させない日常生活について相談することができます。

また、本人は頑張っているつもりでも、会社の上司や同僚から見ると仕事のミスなどが増えている可能性があります。

うつ病を治療していることは人に知られたくないと思うがふつうですが、場合によっては上司に打ち明けておくことがお互いのためになることがあります。