「解決策が見つかりそうだから一生懸命考える」のと、「考えないようしようとしてもつい考えてしまう」のでは、同じ「考える」でも意味が違います。
嫌でもつい考えてしまう方は、考えるというより「ある想念に頭が占領されてしまう」ということです。
そういう考えは頭の中で堂々巡りするだけで、何かの解決策が出てくるわけではなく、どれだけ考えれば気が済むというものでもありません。
こういう「考えても仕方のない考え」の代表的なものが、①過去の屈辱的な体験や恥ずかしい失敗などの心の傷がフラッシュバックする、②根拠のない不安が心の中で膨らむ、という2つの「思い」です。
根拠のない不安というのは、具体的な危険が身に迫っているわけでもないのに「もうすぐ俺は死んでしまう」と思い込むような不安です。
合理性がなく、根拠がないだけに不安を消す方法もなく、不安が不安を呼ぶという形で膨らんできます。
このトラウマ的な記憶も根拠のない不安も、非常につらい感情をともなって心を占領します。その「考え」を振り払おうとしても、なかなか頭から出て行ってくれません。
頭に浮かばないようにしようとしても、向こうが勝手にやって来るのでそうはいきません。
そんな考えには、浮かんだときに早く出て行ってもらうしかありません。べたな方法でもよいから意識を他のものに向けるのがいちばんです。
そのために有効な方法としては次のようなものがあります。
1. 「はい、おしまい」と声に出して言って、立ちあがってエクササイズをする。
じっと座っていると考えの堂々巡りはなかなか収まりません。
「1日2~3回、3セットずつやりましょう」などと言われて3日坊主で止めたエクササイズを思い出して、こんなときに実行することにしたら一石二鳥です。近所を散歩するとか、ジョギングするのももちろんOKです。
2. 歌を歌う、本を朗読する、声を出して語学の練習をする、お経を読む、などで声を出す。
意識を切り替えるには身体を動かすことの他に、声を出すことも有効です。
声を出すことには、沈んだ気持ちをハイにする効果もあります。お経がめんどうなら、ご宗旨の問題もありますが「南無妙法蓮華経」や「南無阿弥陀仏」を100回唱えるだけでも気分がスッキリします。
3. 寝ているときに嫌なことを思い出したら、CDで音楽や落語、語学教材などを聴く。
布団に入ると必ず嫌なことを思いだすという人は、最初から聴きながら寝ると寝付きやすくなります。
心の不安が大きいときは夜中に目を覚ますこともありますが、そんなときも有効です。
4. ときには嫌な思い出や不安に逃げずに対面し、それを乗り越える努力をする。
日頃は考えても仕方のないことは考えないという態度で良いのですが、あまりしつこい思いや不安がくり返し頭を占領するようなら、正面切ってそれを見つめ直してみることも必要です。
それにはカウンセラーや医師など専門家の助けが必要な場合がありますが、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という言葉があるように、トラウマや不安の根元を突き止めることで辛い思いが楽になることがあります。
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