頭痛、食欲不振、倦怠感などの症状で病院に行ったときに、MRIやレントゲン、胃カメラなどで検査をしてもどこも悪いところが見つからないと、多くの場合は自律神経失調症という診断が下されます。
しかし、自立神経失調症の特効薬があるわけでもなく、つらい症状が続くのでなお調べていくうちに、病名がうつ病やパニック障害に変わることがあります。
これは必ずしも誤診ではありません。うつ病やパニック障害などの精神障害には必ず自律神経失調症がともなうからです。
とくに仮面うつ病と呼ばれるうつ病は、抑うつ症状などの精神症状よりも頭痛などの身体症状が前面に現れるので、器質的な異常が見つからない場合は自立神経失調症と診断されることが多くなります。
しかし、とりあえず自立神経失調症と診断されるのは仕方ないとしても、症状が長びく場合はその背景にもっと深刻な精神障害があることを疑うのは、精神科医ではなくても経験のある医師なら当然のことと言えます。
日本心身医学会は自律神経失調症を「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの」と定義しています。
平たくというと、心身にさまざまな症状があって、その原因が身体的なものでなく、しかもうつ病などの精神障害でもないもの、ということです。
うつ病は症状として自律神経の失調をともないますが、より根本的な原因は「脳のエネルギーの低下」、あるいは具体的には「脳内神経伝達物質のセロトニンの不足」です。
自律神経失調症にない症状としては、卑小妄想、自責感情、自殺企図などがあります。
パニック障害に特有の、突然強い動悸、息切れ、めまいなどが起きるパニック発作は、いわば極端な自律神経の失調です。
ふつうの自律神経失調症と違うのは、その発作の原因が強い不安にあることです。また、次の発作が起きるのを恐れる「予期不安」が大きくなり、日常生活に支障をきたすようになるのもパニック発作の症状です。
心身症は、例えば「ストレスが原因で自律神経失調症になり、胃酸が過剰に分泌されてその結果胃潰瘍になった」というような<身体的な病気>です。
原因はストレスによる自律神経の失調ですが、その影響が蓄積して身体に故障が出たのが心身症です。
心身症には胃潰瘍の他に、ぜんそく、高血圧、不整脈など身体のあらゆるところに出る可能性があります。
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