心がつらいときは、処方された睡眠薬の束を見ると「これを一度に飲むと楽になれる」と思ってしまうことがあります。
しかし、リスミーを含むベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、病院で処方された1月分や2月分を服用しても決して死ぬことはできません。
マウスを使った実験では、200~300gのマウスはリスミーを200~300mg投与すると死亡します。
これをヒトに換算すると、体重40kgなら40,000mg、つまり40gで致死量に達することになります。40gなら飲めそうな気がしますが、リスミー2mg錠に換算すると2万錠にもなります。
言うまでもなくそんなに飲むことはできないので、実質的にはリスミーには致死量は存在しないことになります。
私たちに睡眠薬を大量に飲むと死ぬというイメージがあるのは、過去に、今はほとんど処方されなくなった尿素系睡眠薬やバルピツール酸系睡眠薬を飲んで自殺したケースが少なからずあったからです。
作家の芥川龍之介など有名人が睡眠薬で自殺した影響が大きいのかもしれません。
しかし、現在主流になっている睡眠薬に実質的な致死量はないので、もしテレビドラマなどにそんなストリーがあったら、主人公を交通事故で記憶喪失にしたがる韓国ドラマよりもリアリティのないB級ドラマということになります。
それでも現実には睡眠薬の過剰服用で病院に救急搬送されるケースは後を絶ちません。
厚生労働省の研究チームの報告では、2012年に年間50回以上薬物の過剰服用の救急搬送を受け入れた病院が全国で46あったといいます。
過剰服用して病院に搬送された人にどれくらい明確な自殺企図があったかは分かりませんが、睡眠薬を大量に飲んでも、死ぬことはもちろん楽になることもできません。
過剰服用で入院すると、鼻からチューブを入れられて胃洗浄をされる、活性炭を飲まされる、尿道に排尿管をつながれて大量の水分を点滴される、などの非常につらい治療が待っています。
退院しても、睡眠薬が以前ほど効かなくなるという、さらにつらい現実が待っています。過剰服用への誘惑を絶つためには、お酒と睡眠薬を併用しないことも重要です。
過剰服用で病院に運ばれた人の中にお酒を飲んでいる人がかなりの割合でいます。これは、お酒と睡眠薬を併用したことによる意識のもうろう状態が、判断力を狂わせるからだと考えられます。
現実的な対策としては、通院回数を増やして大量の薬を手元に保有しないことがあります。また、医師との面談の機会を増やすことが、過剰服用を抑制することにつながる場合もあります。
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