うつ病の多くは精神的ストレスが原因で発症しますが、飲んでいる薬が原因でうつ病になってしまうこともあります。
これは薬剤性うつ病、薬剤惹起性うつ病と呼ばれます。
原因は薬の副作用なので、その薬をやめれば速やかに改善します。
しかし、薬が原因だと気づけないと、薬を飲むたびに悪化してしまい、本来必要ないはずの抗うつ薬を飲むことになってしまうなどの問題が起こります。
薬剤性うつ病を起こす可能性のある薬は、日常的によく使わる薬であることが多いため、誰でも起こり得ます。
そうならないためにも、どのような薬が薬剤性うつ病を引き起こすのか、知っておきましょう。
・ステロイド
炎症を抑える薬です。関節リウマチなどの自己免疫性疾患から花粉症などのアレルギーまで、幅広く使われる薬です。誰でも一度は飲んだことがあるでしょう。よく使われるのは「プレドニン」という名前のステロイドです。
ステロイドは投与量が多いほどうつ病になりやすいといわれています。
・降圧剤
血圧を下げる薬です。高血圧の患者さんに使われます。降圧剤には、ACE阻害薬(「レニベース」など)、β遮断薬(「メインテート」など)、カルシウム拮抗薬(「アダラート」など)、といくつか種類がありますが、そのうち多くがうつ病の原因になり兼ねます。
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胃酸の分泌を抑える薬です。胃炎、胃潰瘍に使われる薬です。代表的なものには「ガスター」があり、飲んでいる方は多いかと思います。
・インターフェロンα(INFα)
免疫抑制剤です。インターフェロンは免疫細胞が作るタンパク質で、ウイルスやがん細胞を攻撃したり、免疫力を整える働きがあります。C型肝炎の治療や抗がん剤として使われます。
・抗がん剤
一部の抗がん剤はうつ病を引き起こします。
腎がんに使われる「セロイク」や、乳がんに使われる「ノバルディス」が知られています。
・GnRH誘導体製剤
性ホルモンの分泌を抑える薬です。子宮内膜症や前立腺がんに対して使われます。
先程紹介した薬の中でも、ステロイドや抗がん剤は高頻度にうつ病が生じますが、胃薬や降圧薬では頻度はそう高くありません。
降圧剤などは内科で処方される薬なので、精神科の専門医ではないため、見落とされてしまうことがあります。
そうならないためにも、薬剤性うつ病の特徴を知っておくことが大切です。
薬剤性のうつ病は薬が原因なので、薬を飲み始めたらうつ病の症状が出てきて、量を増やすと悪化するというように薬と症状が関連しています。
薬を飲んで気分が落ち込むようになったときは、始めた時期や量の増減で変化がなかったか思い出してみましょう。
薬剤性うつ病は、薬の副作用として生じるため、精神的ストレスが原因となる典型的なうつ病とは症状が異なります。
薬剤性うつ病では、うつ病のきっかけになるような大きな精神的ストレスがみられません。また、うつ病なら必ずみられるはずの症状である抑うつ気分や焦燥感などがみられないこともあります。
典型的なうつ病は、まずいらいらや焦燥感が改善していきます。その後落ち込みや不安が改善し、最後に意欲が改善します。
薬剤性うつ病はそもそも原因となっている不安・ストレスがないことや、うつ病特有の症状がみられないこともあるため、このような経過は取りません。
薬剤性うつ病の治療は、原因となっている薬物の中止です。
一部、インターフェロンなどの薬では効果が現れるのが遅いこともありますが、ほとんどの薬は中止すると速やかにうつ症状が改善します。
また、抗がん剤などのように、うつ病の原因と分かっていてもやめられない場合もあります。
こういう時は主治医と相談して、抗うつ薬の副作用を理解した上で、抗がん剤と抗うつ薬を併用することもあります。
薬剤性うつ病は経過も症状も不自然なうつ病です。精神科医でないと見落としてしまう可能性もあるうつ病です。
毎日飲んでるその薬、大丈夫ですか?うつ症状や不眠、無気力を感じたら、はやめに相談するようにしましょう。
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