アルコール依存症に対する有効な治療薬は少なく、どうしても「本人の意志」に頼らざるを得ないのが現状です。

依存症の場合「依存している物」を断つ、ということは非常に難しく、有効な治療薬も少ないと言われています。

有効な治療薬としては、レグテクト(一般名:アカンプロサート)があります。

2013年に発売の新しい作用の抗酒薬で、抗酒薬とはアルコール依存症の治療薬の総称のことです。

ここでは、飲酒欲求を抑え、かつ安全性も高いと言われる、薬剤「レグテクト」について解説します。

レグテクトは飲酒欲求を減らす作用があり、他飲酒量を下げるナルトレキソン・ナルメフェンと呼ばれる薬剤もありますが、日本では承認されていません。

日本国内で飲酒欲求の抑制効果のある薬剤は、レグテクトのみとなります。

他の抗酒薬としては、ノックビンやシアナマイドが代表的ですが、これらは「アルコールが分解されないようにする」はたらきを持ちます。

摂取されたアルコールが肝臓で分解する酵素「アルデヒド脱水素酵素」のはたらきを阻害する効果となり、少量のアルコールであっても悪酔い状態を引き起こすものです。

アルコール依存症に一定の効果が認められますが、直接的な作用ではなく、薬の服用を中止すると飲酒できてしまうことと、急性アルコール中毒を起こす可能性が問題となります。

レグテクトの場合、中枢神経に作用して飲酒欲求を減らしますので、自然で安全な断酒に向けることが可能です。

飲酒による中枢神経の状態は以下のようになっています。

  1. 正常時は興奮系神経と抑制系神経は通常時、バランスが保たれています。
  2. 飲酒によって、興奮系神経は抑制され、抑制系神経は活性化されます。
  3. 長期間の飲酒によって、常に抑制系神経が活性化している状態となり、正常な働きを保とうとするために、興奮系神経が活性化されます。
  4. 3の状態でアルコールが切れると、今度は抑制系神経を活性化しようとしますので、飲酒欲求が発生すると言われています。
  5. レグテクトは興奮系神経を抑制する働きがありますので、興奮系神経が抑制されバランスが保たれます。そのため飲酒欲求が発生しにくいのです。

レグレクトの効果のほどですが、国内で実施されたアルコール依存症患者へのレグテクト投与臨床試験において、完全断酒率は約50%未満と高い効果が認められています。

偽薬を服用した比較試験では完全断酒率は約35%との結果が出ており、その結果をもってしてもレグテクトのほうが高確率で断酒できることがうかがえます。

実際に使用している医師の評価では「多少の効果はあるが、強くはない」という印象で、患者側からの印象も「飲酒への気持ちが少し抑えられる」とのコメントはあっても、「完全にお酒を飲みたく無くなった」という話は一度も聞いたことはない、というものです。

レグテクトの適用は「アルコール依存症患者における断酒維持の補助」であり、あくまでも補助的に使用する薬剤です。

レグテクトを服用したからと言って、ピタリと飲酒欲求が治まるものでなく、「多少」飲みたく無くなる程度の効果という薬剤です。

レグテクトは穏やかに飲酒欲求を抑える薬剤ですので、レグテクトの服用と断酒教育や自助グループへの参加といった「心理社会的治療」の併用も望ましいと言えます。

 

アルコール依存症とアカンプロサートのまとめ

レグテクトは断酒の意志があり、心理社会的療法と併用しながら、原則として24週間までの服用する薬剤です。

本人に断酒の意志が最も重要であり、意志がない場合は治療にならず、レグテクト服用に意味がありません。

比較的安全性の高い薬剤ですが、初期に下痢・傾眠を発する場合がありますが、自然に改善するか整腸剤で改善が可能です。

また、腎臓疾患にある方への処方はできませんので、注意が必要です。

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