拒食症は過剰なダイエットがきっかけで発症することが多い病気で、患者の多くは10代の女性です。
正式には「神経性無食欲症」あるいは「神経性食欲不振症」といい、過食症を含む摂食障害の1つです。
アメリカの人気音楽グループ、カーペンターズの女性ボーカルのカレン・カーペンターが拒食症のため1983年に32歳で死亡したことで、この病気が広く世間に知られるようになりました。
拒食症はいったん発症するとなかなか治りにくい病気で、非常に死亡率が高い(6~7%)ことでも知られています。
拒食症のスタートラインは「自分は太っている」という認識と「やせてきれいになりたい」という願望で、どちらも女性なら誰しも経験がある心理状態です。
しかし、ここから極端なダイエットにはまると、栄養失調が心身におよぼす影響も加わって、しだいにこの心理状態に異常性が生じる場合があります。
つまり、客観的には太っていないしむしろやせているのに、まだ太っていると思い込む「認識のゆがみ」が生じ、やせてきれいにならないと人に受け入れられないと強く思い込んでしまうことがあるのです。
このような認識から食べることを罪悪視するようになり、心だけでなく身体も食物を受け入れられなくなるのが拒食症です。
拒食症を発症しやすい性格傾向としては、「自尊感情の低さ」があると考えられています。
多くの拒食症の患者さんは人に太っていると言われたことがきっかけでダイエットを始めていますが、そのときに「太っていてブサイクな私には価値がない」と思ってしまうのです。
問題は客観的太っているかどうかではなくて、デブと言われた他人の評価が出発点や判断の基準になっていることです。
それが、どれだけやせればいいのかという目標を見失わせることにつながります。
拒食症の患者さんの多くは標準体重より20%以上も低体重ですが、それでも本人はまた太っていると思っています。
ダイエットが加速するもう1つの側面は、「やせてきれいになったね」という人からのプラスの評価です。
しかし、これも他人からの評価なので、「もっとやせてもっと評価されたい」と思うと、ゴールが蜃気楼のようにつねに先送りされる危険性があります。
ありのままの自分に自信が持てない、自尊感情が低いという性格傾向は、幼少期にじゅうぶん親からの愛情を受け取ることができなかったなどの成育歴に関係があると言われています。
しかし、生得的な気質も要因になるので一概にそうとは言えません。
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