野坂昭如さんの歌にあるように「ソクラテスも、プラトンも、みんな悩んで大きくなった」という悩みならいいのですが、残念ながら心に不安を抱いている人の悩みは、悩めば悩むほどよけい悩みや不安が大きくなるものが多いようです。
意味のある悩みとは、理解しにくい状況を正しく認識しようとする努力や、その状況を改善しようとする努力にともなう悩みです。
こういう悩みなら、あきらめて放置するより良いのはもちろんですし、人を一回り大きくしてくれる前向きの悩みです。
こういう「意味のある悩み」の条件の1つは、自分で解決できる範囲の問題に対する悩みであることです。
そうではなくて、「こんな自分ではなくもっと別の自分に生まれればよかった」とか、起きしてしまって事件を「あんなことさえなければ」という悩みは、解決する可能性がない、悩んでも意味がない悩みです。
「思い出してはくり返し後悔する」というだけの悩みは心の不安を大きくするだけです。さらに「また同じことが起きそうだ」という予期不安で悩むのは、不安を現実にしてしまう効果しかありません。
意味のある悩みのもう1つの条件は、正しい現状認識に基づいた悩みであることです。
例えばは、健摂食障害康を損なうおそれがあるほどにやせているのに「自分は太っている」という誤った認識を持って、もっとやせなければと悩む病気です。
このような悩みは無意味というよりはむしろ有害です。
心に不安を抱えている人の悩みには、このように現状認識そのものがゆがんでいる場合が少なくありません。つまり、悩む必要がないのに悩んでいることが多いのです。
うつ病の症状の1つに貧困妄想というものがあります。これは充分に経済的な余裕があるのに、自分は貧乏で将来の生活が不安だという妄想です。
精神障害の患者さんは、このような妄想にもとづくゆがんだ認識で悩んでいるケースが多いのですが、病気までは行かなくても不安が大きい人は、例えば自分の性格や容貌についての間違った認識で悩んでいることが少なくありません。
では、このような意味のない悩みを抱えるのを防ぐにはどうしたら良いのでしょうか。
その答えはある意味で単純で、自分の認識やものの考え方、ものの見方にかたよりやゆがみがあるかもしれないと思ったら、「誰かに相談する」あるいは「人の意見を聞く」ということが大切です。
その誰かは医師の場合もあるでしょうし、先輩や友人、家族などの場合もあるでしょう。
それはケースバイケースですが、意味のない悩みを一人で悩んでいると、悪循環の渦に引き込まれて悩みを深めるだけに終わります。
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