アルコールは抗不安薬(精神安定剤)とは相性が悪いので、できるだけ併用は避けなければなりません。
アルコールには気分を落ちつかせて緊張をほぐす作用がありますが、抗不安薬も同じ作用があります。
それは、どちらも中枢神経(脳)の働きを抑制するからで、併用すると相互作用でどちらの作用も強く出ます。
それぞれを単独で使用しているときは、どれくらい服用すればどれくらい効く(酔う)かは予測可能ですが、併用すると想定外の効果が現れることがあります。
また、患者さんはお酒を飲んでいることを医師に隠している場合が多いので、薬の効き目や治療の方針について医師が誤った判断をするリスクが大きくなります。
抗不安薬のワイパックスは半減期が12時間の中間型に属しますが、アルコールと併用することで血中濃度が不安定になり、作用時間が想定外に延びる可能性があります。
また、ワイパックスは抗不安作用が「強め」で、催眠作用と抗けいれん作用が「中程度」、筋弛緩作用が「弱~中」という位置づけですが、アルコールと併用するとこれらの作用がいずれも通常より強めに出る可能性があります。
ワイパックスの添付文章にもアルコールと併用すると「眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下を増強することがある」と記されています。
アルコールの酔いでいうと、いつもは足元がふらついたりしないような量で千鳥足になったり、ひどい二日酔いになったりということが起こります。
ワイパックスとアルコールの併用でさらに大きな問題は、アルコールへの依存性もワイパックスへの依存性も早く形成されることです。
これは、併用することで双方の血中濃度が高くなるからです。つまり、お酒も薬も実際よりも大量に飲んでいるのと同じことになるのです。
何か機会あるときに飲むだけの人ならノンアルコールビールでその場をしのぐこともできますが、好きで毎晩のように飲んでいる人は注意が必要です。
できればワイパックスを服用している期間はきっぱり禁酒するのがベストですが、それが難しいようならまず医師にお酒と併用していることを話していっしょに対策を立てましょう。
なかなかお酒が止めらない場合は、お酒を美味しく感じなくする薬や、お酒を飲めなくなる(飲むと気分が悪くなる)薬を処方してもらうという方法もあります。
抗不安薬はお酒と一緒に飲んでいると病気の治りが遅くなるだけでなく、薬を止めるときにたいへん苦労することになります。
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