パニック障害は、日常生活の中で急に強い不安を感じてしまう病気です。強い不安によって息苦しくなり、動悸やめまい、冷や汗などといった症状があります。
また、強い不安の中で「このまま死んでしまうのではないか」という極端な発想に陥ってしまうのも特徴です。これをパニック発作といいます。
一度パニック障害が起こると、予期不安といわれる「またパニック発作が起こるかもしれない」という不安や恐怖に怯えながら生活を送るようになってしまいます。
発作を避けるために、外出できなくなってしまうことも珍しくありません。
しかし、パニック障害は薬で治療できる病気です。
ここでは、どのような薬の種類があるのか、どのようにして効いているのかをご紹介していきます。
うつ病の患者さんによく使われる薬に抗うつ薬(SSRI)があります。これはパニック障害の治療にも使われ、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と呼ばれます。
セロトニンは精神を安定化させる神経伝達物質です。セロトニンは神経の中にあり、信号が届くと神経と神経の間にあるシナプス間隙とよばれる場所に放出されます。
ここにある受容体にセロトニンがくっつくと、精神を安定化させる信号が次の神経へと伝わっていきます。
神経の末端にはセロトニンを神経の中に取り込む装置があり、取り込まれることでシナプス間隙にあるセロトニンの量が少なくなります。
うつ病やパニック障害の患者さんはストレスなどが原因でホルモンバランスが崩れると、セロトニンの分泌量が少なくなっています
。SSRIは、シナプス間隙で信号を送るセロトニンを増やすために、セロトニンを神経の中に取り込む装置をはたらけなくする薬です。そうすることで信号がきちんと伝わり、精神の安定化が図れるようになります。
抗不安薬(安定剤)は不安を抱える様々な病気に使われる薬で、ベンゾジアゼピン系と呼ばれる薬です。SSRIを補助する役割があり、SSRIの効果を高めてくれます。
神経は、様々な神経伝達物質によって、興奮したり抑制したりしています。先述のセロトニンは、精神を安定化させて落ち着かせる抑制系の神経伝達物質です。
同じ抑制系にGABAという神経伝達物質があります。抗不安薬はGABAを活性化することで、脳の活動がスローダウンし、落ち着かせることで、心の不安や緊張を和らげます。
抗不安薬は即効性があり、15分~30分ほどで効果を示すといわれていますが、依存性や強い眠気などの副作用も知られています。
抗うつ薬や抗不安薬などの抑制系の神経伝達物質にはたらきかける薬は、投与しすぎると脱抑制といって、逆に興奮しすぎてしまうことがあります。そういう副作用を避けるために、まずは少量から始めていきます。
大きな副作用がないことが確認できたら、SSRIを十分量まで増やしていきます。十分量というのは、効果が表れるまでです。
これは医者に判断してもらうべきもので、中途半端な治療は症状を悪化させます。不安が消えるまで、怖がらずにしっかり薬を増やすことが大事です。
SSRIを十分量服薬し続けると、1~2ヶ月ほどで不安が消えていきます。ここまできたら、依存を防ぐために抗不安薬を減らしていきます。このとき、不安が再発しないよう慎重に少しずつ減らしていくことが大切です。
薬を飲んで症状が落ち着いている状態を「寛解状態」といいます。この寛解状態が1年維持できれば治療は終了です。
患者さんは寛解状態に入ると「もう治った」と思ってしまい、薬を自主的やめてしまうことがあります。これは絶対に避けなければいけません。
寛解直後は再発率が非常に高いことがしられています。再発を繰り返すとなかなか治らないようになってしまい、難治性となってしまいます。
不安が薄れると、「だいぶよくなった」と薬の必要性がないと感じてしまうかもしれません。ただし、その状態はあくまで薬によって守られているので、薬は絶対に自己判断でやめてしまってはいけません。
その他、漢方薬が用いられることもありますが、上記2つのようにターゲットを絞って効果を示す薬とは違い、身体全体の調子を整えることで、じっくり時間をかけて体質から改善していく薬です。
漢方で使われる生薬はそれぞれ「辛」「酸」「甘」「苦」「 鹹(しょっぱい)」「淡」の5つの味と「寒」「涼」「熱」「温」の4つの薬性をもっています。
それぞれの作用として、たとえば「辛」は新陳代謝をあげるはたらき、「甘」は保養や症状を緩和させるはたらきがあります。
「寒」「涼」は文字の通り消炎、解熱、鎮静作用をもち、「熱」「温」は身体をあたためて新陳代謝をあげるはたらきがあります。
これらの作用をもつ生薬を組み合わせることで、それぞれの人に合った漢方薬をつくっていきます。
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