ストレス社会と言われる近年、うつ病患者は増える一方です。
しかし、その症状の程度にはかなり個人差があり、自分がどれくらい社会生活を制限すべきかを把握できていないのが現状です。
そこで2014年に、精神神経障害者の自動車運転に関する法案が新しく施行されたのをご存知でしょうか。
うつ病患者さんにとって、自動車を運転する際に大きく関係してくるこの法案の内容は、一度確認しておく必要がありそうです。
もし、あなたがうつ病患者であるとして、公安委員会から自動車運転に関して『報告書』や『質問票』の提示を求められたら、まず主治医に相談しましょう。
医師の診断書が必要になることもあるので、後のトラブルを避けるためにも医師に判断を委ねることが第一です。医師が「運転不可能」と判断すれば、免許取得は諦めるのが賢明です。
確かに、うつ病であるなしに関わらず交通事故などのトラブルの可能性は誰にでもあるので、そのレベルの判断はどんな名医であっても非常に難しいというのが正直なところです。
しかし、うつ病と診断された以上は誰かがそれを判断するしかありません。そうなればやはりそれを見極めるのは、主治医が一番妥当だということは理解しておかなければなりません。
うつ病患者さんの運転に関係する法律は2つ存在します。
まず一つ目は「自転車運転死傷行為処罰法(平成26年5月20日施行)」です。
これは特定の疾患を持つ患者が、「自分は安全な運転が可能ではない症状がある」と分かっていながらも自動車を運転し、死傷事故を起こした場合に処罰される法律です。
被害者を死亡させてしまった場合は懲役15年以下、負傷させた場合でも懲役12年以下となっています。
ここで「特定の疾患」と呼ばれているのは、「統合失調症」「低血糖症」「躁うつ病」「再発性失神」「重度の睡眠障害」「意識や運動の障害を伴うてんかん」であり、その中にはうつ病も含まれます。
但し、これには「明らかに判断能力に欠ける重大な障害」がみられるなど、極めて限られた状態を意味します。
二つ目の法律は「改正道路交通法(平成26年6月1日施行)」です。
法律の中身でうつ病に関係するものとしては、まず、公安委員会は一定の病気(先に述べた特定の疾患)の症状を持つ可能性のある人に、「質問票」を求めることが出来ます。
質問票を求められた人はそれに答える義務があり、答えに虚偽があった場合は罰せられます。
次に、医師が「運転不可能」と判断した患者が免許を受けていると分かった場合、医師は本人の同意がなくても公安委員会に診察結果を届け出ることが出来ます。
最後に、公安委員会は一定の病気と疑われる者の免許を。三か月を超えない範囲内で停止する事ができます。
法律が有るということは理解できたかと思いますが、ここで一つ注意しなければならないのは「うつ病の症状に対して運転可能であるか」という事と、「抗うつ剤など治療薬の副作用による症状に対して運転が可能であるか」という事が、また全然違う話になってくるという部分です。
要するに、「うつ病の症状から見ると、運転を許可される程度である」という人でも、「服用する抗うつ剤など治療薬の副作用」から見ると、自動車の運転は危険である可能性があるということです。
これもまた、別の問題として主治医の判断を確認する必要があります。
うつ病治療中の運転のまとめ
ここまで、うつ病治療中の車の運転に関する法律についてお話してきましたが、実はこの法律に対して日本精神神経学会は猛反発しています。
精神神経障害者の運転の明らかな危険性や明確な判断基準もないままに、法律が施行されたことは差別的だと捉えているようです。
確かに現代社会において、運転資格を取り上げられることは、日々の生活はもちろん仕事など経済的な面も制限され、精神的にも大きな影響を及ぼすことは間違いありません。
この問題はまだまだ、医療と法律の両面から見直していく事が必要ですね。
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